颯爽と登場
残念な気持ちを抱えながら、外に出る。
『海女ショー』を見るため食堂から見えた
二階建ての桟橋のような場所に向かった。
まだ、あまり見学者はいなかった。
定刻になって、キョロキョロ海を見て
いると遙か右の方から小さな屋根付きの
漁船のようなものが、近づいてきた。
日に焼けたおじさんが操縦している。
よく見ると白い衣装の海女さんが二人
いた。そして手を振って目の前を通り
過ぎる。海女さんの名前とプロフィール
がアナウンスされる。船が止まった。
眼鏡をつけて、素早く海に飛び込む。
二人のうち潜水の競技スポーツから転身
した人の方が潜りは上手そうだった。
現在は、仕事としての海女さんはいない
そうで、このショーのために訓練をして
いるらしい。つまり、プロの海女は
おらず、海女のショーのプロがいるのだ。
口笛は海に響く
何度か潜って大き持って持って浮かんだ。
手をあげて「とったどー」のポーズをする。
あれが、真珠貝なのだろう。
水面から上がる度にヒューと息をする。
アナウンスによれば、潜水をして肺を痛め
無いようにするための息づかいだそう。
この声がもの悲しく風情があると言われて
いるらしい。私は、空を飛ぶトンビの第一
声に似ているなと勝手に思ってしまった。
約20分くらいの実演で終了した。
手を振って帰る海女さんに、いつの間にか
増えた観客がパラパラと拍手を送った。